TanStackエコシステムの全貌|React Queryからフルスタックフレームワークへの進化
目次
「React Query」として多くの開発者に愛されてきたTanStack Queryですが、2026年のTanStackはもはやデータフェッチライブラリの枠を超え、本格的なフルスタック開発エコシステムへと変貌しています。
TanStackとは
TanStackは、Tanner Linsley氏が中心となって開発するオープンソースのライブラリ群です。もともとはReact Queryとして始まりましたが、現在はReactに限らず、Vue、Solid、Svelte、Angularなど複数のフレームワークをサポートするマルチフレームワークのエコシステムに成長しています。
共通しているのは、TypeScriptファーストの設計思想とヘッドレス(UIを持たない)アーキテクチャです。
エコシステムの全体像
2026年2月現在のTanStackエコシステムを整理します。
TanStack Query(旧React Query)
サーバー状態管理のデファクトスタンダード。非同期データのフェッチ、キャッシュ、同期、バックグラウンド更新を宣言的に管理できます。
const { data, isLoading } = useQuery({
queryKey: ['posts'],
queryFn: () => fetch('/api/posts').then(res => res.json()),
});
v5ではSuspenseとの統合が強化され、React Server Componentsとの組み合わせもスムーズになりました。
TanStack Router
完全にタイプセーフなルーティングライブラリです。Next.jsやRemixがファイルベースルーティングを採用しているのに対し、TanStack RouterはTypeScriptの型システムを最大限に活用したルーティングを提供します。
特徴的な機能は以下のとおりです。
- 型安全なルートパラメータ — URLパラメータ、検索パラメータがすべて型付き
- 型安全なナビゲーション — 存在しないルートへのリンクはコンパイルエラー
- 検索パラメータのバリデーション — Zodなどと連携し、検索パラメータをスキーマで検証
- ルートレベルのデータローダー — ルートごとにデータフェッチを宣言的に定義
TanStack Start(v1.0 RC)
TanStack RouterをベースにしたフルスタックReactフレームワークがリリース候補に到達しました。
TanStack Startは以下をサポートしています。
- SSR(サーバーサイドレンダリング) — 初回表示の高速化とSEO対応
- ストリーミングSSR — データの準備ができた部分から段階的にHTMLを送信
- サーバーファンクション — クライアントから型安全にサーバー側の処理を呼び出し
- Nitroベースのサーバー — Node.js、Bun、Denoなど多様なランタイムに対応
Next.js App Routerとの最大の違いは、ルーティングの型安全性です。Next.jsではファイルパスがルートになるため型情報が失われがちですが、TanStack StartではすべてのルートがTypeScriptで定義され、型安全が保証されます。
TanStack DB(ベータ v0.5)
最も注目すべき新顔がTanStack DBです。これは従来のサーバー状態管理とは根本的に異なるアプローチを取るリアクティブなクライアントファーストストアです。
主な概念は以下のとおりです。
- コレクション — クライアント側のデータストア(テーブルのようなもの)
- ライブクエリ — コレクションに対するリアクティブなクエリ。データが変更されるとUIが自動更新
- 楽観的ミューテーション — サーバーの応答を待たずにUIを即座に更新し、後からサーバーと同期
TanStack Queryが「サーバーにデータを問い合わせてキャッシュする」モデルだとすれば、TanStack DBは「クライアントにデータのレプリカを持ち、サーバーと同期する」モデルです。
TanStack Form
フォーム管理ライブラリです。React Hook Formと同様の位置づけですが、TanStackらしくヘッドレスかつフレームワーク非依存で設計されています。バリデーションは同期・非同期の両方をサポートし、ZodやValibotとの統合も提供されています。
TanStack Table
ヘッドレスなテーブル/データグリッドライブラリです。ソート、フィルタリング、ページネーション、グルーピング、行選択などの機能をUIから完全に分離して提供します。大量データの仮想化にも対応しており、数万行のデータでも滑らかに動作します。
TanStack Virtual
仮想化(バーチャライゼーション)ライブラリです。大量のリストやグリッドアイテムのうち、画面に見えている部分だけをDOMにレンダリングすることで、パフォーマンスを劇的に改善します。
Next.js / Remixとの比較
TanStack Startの登場により、Reactのフルスタックフレームワークの選択肢が増えました。
| 特徴 | Next.js | Remix | TanStack Start |
|---|---|---|---|
| ルーティング | ファイルベース | ファイルベース | タイプセーフ(コード定義) |
| 型安全性 | 中程度 | 中程度 | 非常に高い |
| データフェッチ | fetch + cache | loader/action | サーバーファンクション |
| 企業バック | Vercel | Shopify | コミュニティ主導 |
| エコシステム | 巨大 | 中規模 | 急成長中 |
| 成熟度 | 非常に高い | 高い | RC段階 |
TanStack Startが特に向いているケース:
- TypeScriptの型安全性を最大限に活かしたい
- TanStack Query / Router / Table などを既に使っている
- Vercelへのロックインを避けたい
- クライアントサイドの状態管理が複雑なアプリケーション
Next.jsが依然として強いケース:
- エコシステムの成熟度とコミュニティサポートを重視
- Vercelとの統合(Edge Functions、ISR、Image Optimizationなど)を活用したい
- 大量のサードパーティライブラリとの互換性が必要
TanStackエコシステムを使いこなすには、ReactとTypeScriptの両方の知識が欠かせません。以下の書籍で基盤を固めましょう。
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まとめ
TanStackは「便利なライブラリの集合」から「一貫した設計思想を持つ開発プラットフォーム」へと進化しています。
- TanStack Start がRC到達し、フルスタックフレームワークとして本格稼働間近
- TanStack DB がクライアントファーストのデータ管理という新しいパラダイムを提案
- TypeScriptファースト の設計思想がすべてのライブラリに貫かれている
- Next.js / Remixに代わる第三の選択肢として現実的なポジションを確立
今すぐNext.jsから移行する必要はありませんが、新規プロジェクトの技術選定時にはTanStack Startも候補に入れる価値は十分にあります。まずはTanStack Queryから試して、エコシステムの設計思想を体感してみてください。